あどせんす!

2009年12月5日土曜日

3Dホームエンターテイメントは本当に普及するのか

3Dホームエンターテイメントは本当に普及するのか

パナソニックやソニーといった名だたるAVメーカーが、AV機器事業の“次の一手”として準備を進めているのが3D。Blu-rayの3D規格が今年の年末に策定される見通しで、その後、各社から対応機器が続々と登場するはずだ。来年1月のCESは3D一色に染まることだろう。

パナソニックはかなり早い段階から3D化への取り組みを行い、今年1月のCESでは103インチの3DプラズマテレビとBDプレーヤーを展示。さらに CEATECでは商品化を見越した50V型の3Dプラズマテレビを出展するなど、すでに準備万端という状況だ。大坪文雄社長は対応機器を「どこよりも早く市場投入する」と述べており、2010年の早い段階での商品化が予想される。

一方のソニーも鼻息が荒い。まずは「3D&BDプロジェクトマネジメント部門」を新設し、社内の環境を整えた。さらに具体的な商品についても、 3D対応のテレビやBDを2010年に発売すると宣言しただけでなく、PS3の3Dソフト発売も表明した。3Dをゲームにも広げることで、コンテンツの質と量をともに増やしていくという考えだろう。また得意とする業務用映像制作システムでも3D関連機器に注力する。ソニー全体で、3D関連商品の売上げを 2012年度に1兆円(コンテンツを除く)に伸ばすというから、その意気込みは半端なものではない。

国内メーカーの中では、この2社が当面のあいだ3D市場を牽引していくものと予想されるが、むろん、ほかのAVメーカーも準備を着々と進めている。今年のCEATECではほぼすべてのテレビメーカーが3Dテレビを展示し、その技術を競っていた。

各社が肥沃なフロンティアとして期待を寄せる3D対応機器だが、本当にメーカーの思惑通りに普及は進むのだろうか。ここでは、あえて普及にとって逆風と考えられる要素も取り上げ、それを乗り越えるための手立てを考えてみたい。

■誰に買ってもらうのか

まず、3D対応機器をどこでどれだけ売るか、あるいは売れるのかということが問題だ。ご存じの方も多いだろうが、劇場映画の3D化は北米が世界で最も進展しており、対応スクリーンの数も多い。通常の2Dの上映よりも高い単価を設定できることも手伝って、比較的かんたんに3D化できるCGアニメだけではなく、大作の実写映画なども次々に3Dで上映されている。このような下地がすでにある北米では、3Dに対する一般消費者の認知度も高いと考えられる。AV メーカーもまずは北米での普及拡大をねらっているはずだ。だがご承知のように、アメリカはまだ世界同時不況の余波から抜け出し切れておらず、消費マインドは依然として低調のままだ。2年前なら知らず、いまは立ち上げの時期としてはタイミングが良いとは言えない。

日本国内については説明するまでもない。経済環境が良くないことは、多くの方が肌身で実感していることだろう。また、最近ではシネコンで3D対応のスクリーンも増えてきたが、一般消費者が「3D」と聞いても、CEATECで展示されていた3Dテレビのような、鮮明な映像を想起することは難しいはず。赤青メガネがせいぜいといったところではないだろうか。まずは強力なプロモーションや啓蒙活動による市場の整備が必要で、大きな市場に花開くまでにはしばらく時間がかかることだろう。

さらに先進国では、デジタル放送への完全切換がすでに完了していたり、日本のように間近に迫っている国が多く、ようやくアナログテレビからデジタルテレビへの更新が終わりつつある状況であることも無視できない。

日本の例で考えてみよう。エコポイントを利用して薄型テレビとBD機器を買い揃えた人がいるとして、まだそれほど長期間使っていない状況で、3Dという付加価値のために買い替えさせることができるだろうか。

もちろんデジタル→デジタルの買い替え需要、買い増し需要がこれから大きく増えることは確実だから、まずはそこを狙っていくということになるだろうが、一般的な消費者は、数十万円単位の投資をかけるのに見合うリターンが得られるかどうかをシビアな目で判断するはずだ。

成長が著しい新興国市場、中でも中国はどうだろうか。個人的には、中国が3D普及の橋頭堡になる可能性は十分にあると考えている。人口の多さ、経済成長率の高さは言うまでもないが、まだデジタルテレビへのシフトが一巡しきっていないということがその大きな理由だ。また、彼らの多くはかつての日本人のように消費を楽しみ、豊かな生活に対する憧れを抱いていると聞く。はじめて薄型テレビを購入する際、それほど価格差がなければ、近隣に自慢できる3Dテレビを選ぶというストーリーは比較的容易に想像できる。

当地で地元メーカーや韓国メーカーに押されがちな日本メーカーも、先進的な3DテレビやBDプレーヤーを早期に投入することで技術力をアピールし、挽回を図るということが可能になるかもしれない。ただし中国は独自の光ディスク規格「CBHD」の普及拡大を図っているため、BDパッケージソフトについては、話はそれほど単純なものに収まらない可能性はある。

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